EDの僕がハプニングバーに行ったら人生が変わった 【第4話】勃たせることを諦めたら、新しい扉が開いた
あの日以来、僕の足がBARへ向かうことはなかった。
「いい歳して、調子に乗りすぎたんだよ」
「もう夢を見るような歳じゃないだろ」
そんな言葉が、頭の中をぐるぐる回っていた。
女性に会いたいとも思わない。性について考えたくもない。
僕は完全に、男としての自己嫌悪の中に沈んでいた。
BARの代わりに、ひとり居酒屋へ
BARへ行かなくなった僕は、仕事帰りに一人で居酒屋へ寄るようになった。
そこは、同年代のサラリーマンたちが静かに酒を飲む店だった。
誰も知らない。誰とも話さない。

カウンターの端で黙って飲み、酔ったら家へ帰る。
女性に期待されることもない。男として試されることもない。それが、今の僕には楽だった。
そんな生活を一年ほど続けていた、ある日のこと。
ほろ酔いで店を出た僕の目に、一枚の看板が入った。
疲れた心にぬくもりを。ハンドマッサージで癒やしのひととき。
男性向けのオイルマッサージ店だった。

普段なら、そのまま通り過ぎていたと思う。
けれど、その日の僕は本当に疲れていた。身体ではなく、心が。
「ぬくもりか……」
その言葉に引き寄せられるように、僕は店の前に立った。
気がつけば、ドアノブに手を伸ばしていた。
笑顔が素敵な女性
中へ入ると、笑顔が素敵な女性が迎えてくれた。

「こんばんは」
柔らかい笑顔だった。愛菜さんという名だった。
案内されたのは、小さな個室。照明は控えめで、ほのかにアロマの香りが漂っている。中央には施術用のマットが敷かれていた。
ここは風俗店ではない。女性スタッフが男性客へ、一般的なオイルマッサージをする店だった。
施術が始まると、温かいオイルが背中に広がった。
愛菜さんの手が、肩から背中、腰へとゆっくり移動していく。

僕は、ただ身を委ねていればよかった。何かを期待されることもない。男として結果を出す必要もない。
勃つか、勃たないかを気にする必要もない。
その時間が、とても心地よかった。
気づけば僕は、毎週のように愛菜さんのもとへ通っていた。
実は、僕……EDなんです
何度か通ううちに、いろいろ会話をするようになった。
仕事のこと。最近食べたもの。どうでもいいテレビの話。特別なことは何もない。
けれど、女性と二人きりでいながら緊張せずに過ごせる時間は、僕にとって貴重だった。
ある日、僕は思い切って口を開いた。
「愛菜さん、相談があるんです」
彼女が少し驚いた様子で。
「何ですか?」
「あの……実は僕、EDなんです」
愛菜さんの目が少し戸惑っているのがわかった。
僕は、これまでの出来事を話した。
久しぶりに女性と二人になったのに、身体が反応しなかったこと。治療薬を飲んで再挑戦したのに、それでもダメだったこと。
そして、それ以来、性から逃げていること。
愛菜さんは、僕の話を黙って聞いてくれていた。
「大変だったんですね……」

その声を聞いただけで、胸の奥に固まっていたものが少しだけほどけた。
僕は、言葉を続けた。
「愛菜さんに触れてもらったなら、僕の下半身は反応するんじゃないかって……」
愛菜さんの表情が曇った。
「ここは、そういうお店ではないんですよ」
「そうですよね。すみません」
当然の答えだった。
僕は自分の都合で、彼女を困らせてしまった。
この話はここで終わりにしよう。そう思った。
ところが、少し黙ったあと、愛菜さんは小さな声で言った。
「お店には内緒にしてくださいよ」

その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が大きく跳ねた。
「もちろんです」
思わず即答すると、愛菜さんは小さく笑った。
一瞬だけ戻ってきた息子
その日、愛菜さんは今まで触れたことのない、僕の下半身に手を伸ばしてくれていた。
すると――。
「おっ……!」
息子が反応した。
久しぶりの感覚だった。
「よし!」
心の中で思わず拳を握った。帰ってきた。ついに息子が帰ってきた。

しかし、喜んだのもつかの間。
その反応は、潮が引くように消えていった。
困惑している愛菜さんも、どうにかしようとしてくれている。
それが伝わるほど、僕は焦った。
申し訳ない。期待に応えなければ。早く何とかしなければ。
「うーん……ダメかぁ」
愛菜さんが困惑しているのがわかる。
もう、笑うしかなかった。
その後、愛菜さんと何を話したのか、ほとんど覚えていない。僕は逃げるように、早々に店を後にした。

別の道
こんな可愛い子に触ってもらっていたのに、僕の身体はまるで反応しない。
「どうして勃起しないんだろう……」
情けなさばかりが込み上げてきた。そして、ぼーっと天井を見上げている僕であった。

――勃起できない男に、価値はないのだろうか。
そんなことまで考えていたとき、ふと別の疑問が浮かんだ。
待てよ。女性に喜んでもらう方法って、本当に挿入だけなのか?
もし挿入ができなくても、口や手を使って女性を気持ちよくすることができたら。
むしろ、挿入以上に満足してもらえたら――。
それって、すごいことなんじゃないか。
さっきまで「勃起しないこと」ばかり考えていた僕の頭に、初めて別の道が見えた気がした。
年上の彼女から渡されたもの
昔、年上の彼女から一冊の本を渡されたことがある。
「これを読んで、少し勉強してみて」
彼女から渡されたのは、SEXのテクニック本だった。

当時の僕は、SEXに学ぶべき技術があることさえ知らない。AVで見た場面を思い出しながら、自分が触れたいように触れていただけだった。
正直、勉強する必要性も感じていなかった。それでも、せっかく渡されたのだからと、本に書かれていたことを何となく試してみた。
すると、彼女の反応は明らかにいつもと違っていた。
やがて僕にとって、SEXは子どもをつくるためのものへと変わっていった。そしていつしか、あの本の存在さえ忘れていた。
――あの本、まだ捨てていないはずだ。
押し入れの奥から引っ張り出し、今度は真剣に読み始めた。
勃起できなくても、女性を喜ばせることはできるかもしれない。そこに、男としての最後の可能性を感じていた。
いざ、風俗店へ
本当に通用するのか確かめたくなり、僕は風俗店へ向かった。
女性の反応は、思った以上によかった。
むしろ、良すぎて不安になる。

――本当に感じているのか。仕事だから大袈裟に反応しているだけではないのか。
ちゃんと確かめたい。しかし、練習を頼める女性など簡単には見つからない。
身近な女性を思い浮かべてみたが、愛菜さんしか浮かんでこない。
愛菜さん
僕は再び愛菜さんの元を訪れた。
彼女が少し戸惑っているのが分かった。

先週のことを気にしているのだろう。
「今日は普通のマッサージだけで大丈夫ですよ」
そう伝えると、彼女は静かにうなずいた。
愛菜さんは何も言わず、いつものように施術を続けた。
「あの、愛菜さん」
彼女が手を止めた。
「はい?」
僕は一度、咳払いをした。
「もしかしたらなんですけど……僕が触れる側になったら、何か変わるかもしれなくて」
「え?」
「その……愛菜さんの身体に触れさせてもらえませんか?」
一瞬、空気が止まった。
やってしまった。今日の施術もここで終了かもしれない。

彼女は少し考えたあと、静かに言った。
「無理なことは、無理ですからね」
僕は顔を上げた。
これは…OK?の返事?
「嫌なことは、絶対にしません。愛菜さんが嫌だと思ったら、すぐにやめます」
安心してもらいたくて、僕はいつもより強い口調で言った。
愛菜さんはしばらく黙ったまま、僕の顔を見つめていた。やがて、念を押すように言った。
「本当に、お店には内緒にしてくださいね」

その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が大きく揺れた。
勃たせることばかり考えていた僕の前に、別の扉が開き始めていた。
――第5話へ続く

※登場人物名や店舗に関する情報は、プライバシー保護のため変更し、複数の出来事を再構成しています。施術者へのサービス外行為の要求を推奨するものではありません。相手の意思と店舗の規則を尊重することが前提です。