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EDの僕がハプニングバーに行ったら人生変わった【第7話】モテる男を観察したら、王道なんてなかった

hahaha3

「僕の性感マッサージのモデルになってもらえませんか?」

勇気を振り絞って女性を誘った僕は、「このあと、犬の散歩があるから」

という一言で、あっさり撃沈した。

断られた理由が、本当に犬の散歩だったのかはわからない。

しかし、ひとつだけ確かなことがある。初対面の女性に、ほとんど会話もせず、

「性感マッサージのモデルになってください」

とお願いするのは、断られて当然だ。

僕に足りなかったのは、女性を気持ちよくする技術ではない。

そこへたどり着くまでの技術だった。

何事にも、王道というものがあるはずだ。

そう考えた僕は、BARへ通いながら、ほかの男性たちがどのように女性との距離を縮めているのか観察することにした。

会話だけで空気を変える男

ケンタさんは、女性から自然に性的な話を引き出すのが上手かった。

「どんな願望があるの?」

「触られるなら、どこが好き?」

そんな質問を、天気の話でもするような自然さで聞いてしまう。

初対面の女性にも、まったく臆さない。

もちろん、誰にでも強引に迫るわけではない。

相手の表情や声の調子を見ながら、会話を深めていく。

気づけば女性の表情が柔らかくなり、二人の距離が近づいている。

そして、いつの間にか五階へ消えていく。

おそらく彼にとって、誘うことは特別なことではないのだ。

会話の続きとして、自然に5階に行って裸になる。

『天性のジゴロ』僕は心の中で、ケンタさんをそう呼ぶことにした。

笑いで距離を縮める男

ある夜、店の空気を一瞬で変えてしまう男性が現れた。

モロオさんという常連だった。

彼が店に入ってくると、それまで静かだった女性たちが笑い始める。

特別に面白い話をしているわけではない。

しかし、彼が話すと、普通の出来事まで笑い話に変わってしまう。

店内では、彼を囲んで女性たちが楽しそうに笑っている。

一見すると、誰よりもモテているように見える。

しかし、本人の中では違っていた。

僕には絶対に真似できない才能だった。

「女性のみなさん、とても楽しそうでしたよ」

素直にそう伝えると、モロオさんは少し寂しそうに笑った。

「それがさぁ。。。」

「笑いは取れるんだけど、女性がその気にならないんだよ」

「そうなんですか?」

「女性とは仲良くなれる。でも、五階には誘えない。僕は、ただの盛り上げ役なんだ」

笑わせることと、男性として意識されることは同じではないらしい。

悩んでいるのは、自分だけではなかった。

そう思うと、少しだけ心が軽くなった。

他人を持ち上げて、自分も上がる男

白樺さんは、パッと見たところ、ごく普通のおじさんだった。

目立たない。

自分から女性を口説いている様子もない。

特別モテそうにも見えない。

それなのに、なぜか気づくと五階にいる。

僕は、その仕組みがわからなかった。

ある夜、四人がけのテーブルを眺めていると、白樺さんが隣にいる男性の話を始めた。

「ねえ、彼のアソコ、すごいんだよ。真珠が入っているんだって」

「えっ、真珠? 本物?」

女性が食いつくと、白樺さんはさらに話を膨らませる。

「気持ちいい場所に当たるたび、快感のビッグバンが起きるらしいよ」

当の本人は、グラスを手に黙って笑っているだけ。それなのに、女性たちの期待はどんどん高まっていく。

「みんなで見に行ってみない?」

白樺さんが話を振ると、隣の男性は待ってましたとばかりに。

「二個入ってます。真珠」と得意気に語った。

そして四人は、五階へ上がっていった。

――白樺さんやるなあー。

僕は思わず、その背中を二度見した。

他人を持ち上げて、女性の興味を引き、そして自分も一緒に上がる。

自分の自慢は一切しない。

誰かを輝かせながら、最終的に誰よりも得をする。

白樺さんは、アシストの達人だった。

場をひとつにする男

ゲームを使って距離を縮める男性もいた。

王様ゲームや玩具の黒ひげ危機一髪などを使って、初対面同士の客を巻き込んでいく。

「一番の人は、セーラー服に着替えてください」

番号を引いた人は、コスプレルームへ向かう。

もちろん、一番を引くのが女性とは限らない。

男性が当たることもある。

そのためなのか、店には男性でも着られる大きなサイズのセーラー服が用意されていた。

いい大人の男性がセーラー服姿で戻ってくると、店内は笑いに包まれ盛り上がる。

その勢いのまま、

「みんなで五階へ行こう」

という流れになることもあった。

しかし、王様ゲームをすれば成功するわけではない。

五階へ行きたいという下心が強すぎると、結果は悲惨だった。

「じゃあ、このまま全員で五階へ行きましょう!」

そう宣言した瞬間、女性たちが一斉に席を立つ。

そしてテーブルには、男性だけが残されることも。。。。

同じ方法でも、誰が、どんな空気で行うかによって結果はまったく違う。

お願いタイプ

ひたすらお願いして、五階へ誘う男性もいた。

「五階、行こうよ。いいじゃん」
「お願いします。お願いします!」

両手を合わせ、何度も頭を下げる。その姿には、口説き文句も駆け引きもない。口説くというより、拝み倒すタイプだ。

ただ、見ている限り、男性と女性の根競べにしか見えなく、成功率も低かった。

女性にとっては迷惑だろう。

けれど、ガラスのハートの僕には、何度断られても頼み続けられるその鋼のハートが、少しうらやましくもあった。

おこぼれタイプ

自分からは、何もしない男性もいた。誰かが女性と仲良くなり、「このテーブルのみんなで五階へ行こう」という流れになるのを、ひたすら待っている。

僕は彼らを、心の中で「おこぼれタイプ」と呼んでいた。

観察していると、おこぼれにも二つのタイプがあった。

一つは、その場のテンションに溶け込む「同化タイプ」だ。

別のテーブルにいたのに、みんなが立ち上がる頃には、昔からの仲間のようなテンションで輪に入っている。会話の中身は知らなくても、笑うタイミングはぴったり。

もう一つは、「存在そのものを消すタイプ」。

こちらは輪に入ろうとすらせず、みんなの後ろをそっとついていき、しれっと五階へ上がる。

そして、いつの間にか裸になってその場に参加しているのだ。

自分では流れを作らず、誰かが作った流れに乗る。僕は、このタイプを「小判ザメ」と呼んでいた。

ただし、毎回成功するわけではない。しばらくすると、五階から一人だけ戻ってくる男性もいる。

どうやら、追い返されたらしい。

追い返されても凹まないメンタルだけはうらやましかった。

誘い文句よりも大切なもの

何人もの男性を観察するうちに、僕はようやく気づいた。女性を誘うための、絶対的な王道などないのだ。

場を盛り上げる人もいれば、話を引き出す人もいる。それぞれが自分の強みや個性を生かしていて、アプローチの方法は誰一人同じではなかった。

ただ、うまくいっている男性には共通点がある。みんな、女性の興味を引くのがうまいのだ。 

僕は女性を気持ちよくする方法ばかり勉強してきた。

しかし、その前に必要なのは、

「この人と5階に行ってみたい」と思ってもらうことだった。

笑いの才能はない。ジゴロのような話術もない。人の流れに紛れ込む器用さもない。白樺さんのように、他人をアシストする自信もない。

観察すればするほど、僕には何もないことがわかってきた。

それでも、人間ウォッチングのためにBARへ通い続けた。

すると今度は、モテる、モテないだけでは説明できない、少し変わった男性客が目に入るようになった。

この店は、男女が出会う場所であると同時に、

人間の欲望と孤独が交差する場所でもあった。

第8話へ続く。

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